Stairway To Heaven (天国への階段) 和訳 ~解説~

前回はLed Zeppelin の Stairway To Heaven (天国への階段)を和訳しましたが
ここで解説させていただきたいと思います。
 
基本的な方向性は ~はじめに~ でも書いたように
楽曲の構成と彼自身の歌詞である
”words have two meanings”と”When all are one and one is all”のフレーズを軸において解釈しています。

いずれ気が向けば他の曲も挑戦してみたいと思います。



もの悲しいイントロから始まる第1章。とある女性の話。彼女は何を買っているのか?一声で手に入れられる「そこ」とは何処なのか?壁には何て書いてあるのか?

*(諺)All that glitters is not gold. 「光るものすべて金ならず」という諺をもじってます。あの結晶はキラキラ光ってるのかな?goldにはスラングがあります。


* stairway to heaven この曲のタイトルにもなってるフレーズ。heavenは対訳すると「天国」ですがもう一つ”great happiness”の「極楽、至福、パラダイス」といった意味があります。
 実はstairway to heavenというタイトルで1960年にNeil Sedakaがリリースしています。Led Zeppelinよりも11年前です。曲は全く違いますがチャート9位を記録したそうです。また後の1975年にはO'Jaysが同じタイトルをリリースしています。Neil SedakaもO'Jaysも至福の世界”great happiness”の意味で恋人同士の歌です。ZEPの至福の世界はほとんどタブーですね。


*In a tree by the brook there's a songbird who sings これは壁の落書きに書いてある言葉だと思います。songbirdは「情報屋」の意味だとするブログがありましたが、スラング辞典では「女性シンガー」しか確認できませんでした。しかしsingには「情報をタレこむ、密告する、白状する」等の意味があります。またbirdには男性に対しても使える「(ある特殊な)人、奴」等の意味があります。彼女ならこの意味深な落書きを見て一応は確かめてみたいですよね。そこにいるのは〈階段〉情報をくれる人ともとれるし、警察の協力者で密告されるので気を付けろ!っていう意味にもとれます。


*Sometimes all of our thoughts are misgiven misgive「(その人の心)が(その人)に疑念を抱かせる」という使い方をしています。辞書にも小さくしか出ていませんがinterestと同じ種類の他動詞ですね。受動態なので主語は明示しませんが「何か」が all of our thoughtsに疑念を抱かせるわけです。普段、僕等が使ってる言葉が全く違う意味で使われている世界があるなんてちょっと疑心暗鬼になりますよね。


 

この曲のメインとなるギターメロディーに続く第2章。僕が体験した話。〈そいつ〉とは何なのか?どんな体験なのか?どうやって皆は〈そいつ〉に辿り着くのか?

*it makes me wonder ライブではこの後に”She does...”とか”Give it to me...”と歌っているのでitはやはり〈そいつ〉で良いと思います。


*(諺)He who pays the piper calls the tune 「笛吹きに金を払う者には曲を注文する権利がある」という諺をもじってます。普通笛吹きとはバグパイプ奏者だそうですが、pipeにはスラングがあります。そんなpiperに注文するものとは何でしょう?piperは演奏するのではなく「物事の順序を案内してくれる」と言っているのです。tuneにはスラングを確認できませんでした。でも、落ち着かない心の「調子を整えるtune」なら意味が通りますよね。


*stand looking, stand long 「我慢する」の意味で使うときは普通はcan'tなど否定語を伴いますが、ただ「立って見ている」「長く立っている」だと心に響きません。我慢した後の「新しい夜明け」の方が意味は通ると思います。受験英語ではないので柔軟にしたいですね。standに我慢の意味を持たせた英語の発想は面白いです。


 

同じメロディーに続いて今度はボンゾのドラムが入って少しずつ盛り上りを見せる第3章。場面は変わり、〈そいつ〉に辿り着いた君に対して歌っています。騒ぎとは何なのか?春の大掃除、五月の女王とは何なのか?

 この章の解釈は難しいです。ライブではこの章の前に”But, I've got some good news. Listen!”と歌っています。何が良い知らせなのか良く分かりませんが前章までの堕落した流れを変える出来事ではあると思います。「やるかやめるか人生を変える時間は長い目で見ればまだある」と言っていますが現実はそんなに甘くはありません。ロバートも抜け出せない人を何人も見てるはずです。ライブでもこの後に”I hope so.”と言っています。「そうだといいね~」くらいの感じでしょう。


*It's just a spring clean for the May queen. クリーン、クイーンと韻を踏んでいるのは分かりますが、実際「五月祭」など英国の文化的なことは良く分かりません。ちなみにjust aの”a”を強調するため「エイ」と発音しているので「ホントに単に~なだけだよ」と騒がしくても大したこと無いと言っているのです。


*Spring Clean 日本では年末ですが、英国では毎年春に大掃除をする風習があるそうです。英国にも定期的な一斉摘発があるのだろうか?


*May Queen ヨーロッパでの五月祭の主役「五月の女王」。若い女の子が選ばれる。摘発が済めばまた新しい女の子が仲間入りか?


 

第3章と同じメロディーなので同じ章かなと思いましたが、場面が違うので第4章とします。同じ様な文体を続けて〈そいつ〉へと誘っている悪い詩です。

*can you hear the wind blow  風がフーっと吹いてるわけですが、blowにはスラングがあります。動詞でも名詞でも使います。


*the whispering wind この whisperingは第2章で出てくる whisperingと同じだと思います。風が囁いているのです「パイパーに頼めば・・・」と。「その噂の上に例の〈階段〉は横たえてある」と言っているのです。


 

ジミーの格好いいギターソロに続いてテンポも上がり、いよいよヘヴィーなクライマックス。第5章です。ここは物語というより強いメッセージをフレーズごとに叫んでいます。人生の転落。あの有名人もみんな頼っているものとは?君も〈曲〉を手にいれたいならこの歌を良く聞け!!と言っています。悪い奴です。そして最後の締めくくり「全てが一つ、一つが全て」のくだりです。

*How everything still turns to gold 皆が良く知る彼女が示したい内容です。全てがくるっとゴールドに振り向いてしまうわけですが、turn toで「頼る」という意味があります。面白いですね。白い光を放っている彼女は白人のゴージャスなセレブなんでしょうか。
everyoneならすんなり意味が通るのに~thingにしたんですね。直接過ぎますか?あらゆるものが頼ってるということでしょうか?


*When all are one and one is all 最初のallは〈 〉で括ったそれぞれの言葉たちです。これらの違う言葉全てが一つ(の意味)である(と分かった)とき!、そしてその一つこそが全てであると(分かった)とき!と言っているのです。それはこの曲の一貫したテーマを指しています。嫌ですね。


*To be a rock and not to roll 普通は「岩」です。それでも良いのですが、別にやめるように警告している歌でもなさそうだし、「不動の心」「信頼の人」とするには相応しくない歌ですよね。当時の(今でも?)蔓延したロック業界を考えるとここはRock'n Rollでいきたいですね。もちろんrockにもrollにもスラングがあります。
ロックであるとはどういうことでしょう。当時のロックスターがどんだけやりたい放題だったか・・・。ZEPもご多分にもれずやんちゃ騒ぎがたくさんあったと聞きます。挙句にはジミーの家で盛り上がり過ぎてボンゾが死んでしまう始末。ライブでは”not to roll, not to roll, …”と繰り返し訴えているので一応は警告しているのでしょうか?ちなみに動詞のrollには「(警察の車で)連行される」とか「(警察に仲間などを)詳述する」とかのスラングもあります。もしそうなら「連行されないように」とか「仲間を売らないように」と警告しているのかもしれません。



このように色んな意味を持った言葉で韻を踏んだり諺をもじったりして言葉遊びをしている歌です。対訳では意味が通らない様にして分かる人には分かるという仕掛けをしたところも名作と言われる所以かも知れません。  
*注意:スラング、俗語は流行り廃りが激しく浸透する地域もそれぞれなので、スラング辞典に載ってても作曲当時その地域で使われていたかは定かではありません。昔の歌だけに時代考証も難しいです。