it を「それ」と訳すと習ったけど・・・
Aさん: When is the next concert?
Bさん: It's on July 5th, at Midori Hall.
Aさん: Where is that?
Bさん: It's near the station.
という二人の会話が教科書にあって、"that" が「緑ホール」を指しているよ。"it" は「それ」っていう意味だよ。って説明したけど自分でもイマイチしっくりこない。
子どもからは "that" で聞かれたのになんで "it" で答えるの?と質問されて
そう言えばなんでだろう?って答えに困る。
it には意味が無い??
英英辞典で調べたら "it" には「それ」という意味が存在してないと分かりました。
でも英和辞書とか教科書には訳語として「それ」って書いてある。
どういうことなのか?
"it" は SVC SVO SVOC などの文の型を保つためにそこに置いただけの単語でした。
"it" は日本語で訳しようが無いので指示語の「それ」を訳語に当ててしまったのが誤解の元でした。日本語の「それ」は指示語としての性格が強いので誤解してしまうのです。何なら "it" は訳さない方が誤解が無くなります。それくらい "it" は形式的な単語です。数学の代数に近い感覚で "it" にあらゆる物事を「代入」できる記号的な機能があります。聞いている側からすると文脈を理解するのに "it" が何を指しているか知る必要があるだけなのです。
it の本来の意味とは
- 主語、目的語、前置詞の目的語に代名詞として使って文の”型”を補完する。
- 発言者は事物、人、動物、性別の分からない赤ん坊などを想定している。
- 一般的な事柄でも先に述べた事柄でも漠然とした状況でも幅広く示せる。
- 発言者にとって it に重要度は無い。it から受けた先の内容に焦点がある。
以下、Oxford dictionary での例文で解説します。
- 1:すでに述べられた、あるいは今話している動物や事物を表すのに使う
- 2:赤ん坊、特に性別がまだ分からない赤ん坊を表すのに使う、
- 3:人物を特定するのに使う
- 4:時間、日付、距離、天気などについて話すとき主語で使う
- 5:すでに知られていたり起こっている事実や状況を表すのに使う
- 6:真の主語や目的語を文章の後に置いて本文の主語、目的語を補って受ける
- 7:状況について話すときに使う
- 8:文章のある部分を強調するのに使う
- 9:まさに必要とされているもの
1:すでに述べられた、あるいは今話している動物や事物を表すのに使う
・‘Where's your car?’ ‘It's in the garage.’
主語を補完、it =自分の車、ガレージの中が重要、"It's" は無くても成立
・Did you see it?
目的語を補完、it =話題に出てきた物?出来事?、見たかどうかが知りたい
・The other room has two beds in it.
前置詞の後を補完、it =先に発言した部屋、中に2つあることが重要
・Look! It's going up that tree.
主語を補完、it =今見ている動物?人?、木を登ってる様子に焦点
・We have $500. Will it be enough for a deposit?
主語を補完、it =先に言った金額、手付金に十分かどうかが重要
2:赤ん坊、特に性別がまだ分からない赤ん坊を表すのに使う、
・Her baby's due next month. She hopes it will be a boy.
主語を補完、it =彼女の赤ん坊、望んでるのが男の子であることに焦点、it は訳さ
ないほうが自然、性別が分かっているなら he か she を主語にできる
3:人物を特定するのに使う
・It's your mother on the phone.
主語を補完、it =電話の相手、あなたの母親であることが伝えたい情報
・Hello, Peter, it's Mike here.
主語を補完、it =ここにいる人、Mike という名前が伝えたい情報
・Hi, it's me!
主語を補完、it =自分自身、”私よわたし"(覚えてる?)って伝えたい
・Was it you who put these books on my desk?
主語を補完、it =who以下の事柄、あなたなのかどうかが重要
4:時間、日付、距離、天気などについて話すとき主語で使う
・It's ten past twelve.
主語を補完、it =時刻、10時12分過ぎを伝えたい
・It's our anniversary.
主語を補完、it =記念日、伝えたい情報は自分たちの記念日
・It's two miles to the beach.
主語を補完、it =距離、伝えたい情報は2マイル
・It's a long time since they left.
主語を補完、it =時間、長い時間が経ってることを伝えたい
・It was raining this morning.
主語を補完、it =今朝の天気、雨が降っていたことが重要
・It's quite warm at the moment.
主語を補完、it =当時の気候、かなり暖かいことを伝えたい
5:すでに知られていたり起こっている事実や状況を表すのに使う
・When the factory closes, it will mean 500 people losing their jobs.
主語を補完、it =When以下の状況、状況よりもそれが意味する内容の方が重要
・Yes, I was at home on Sunday. What about it?
前置詞の後を補完、it =前の発言、一体何なのか?に焦点(= Why do you ask?)、
that だと前の発言内容に意識が向いてしまいその内容を知りたいのかと
誤解される。
・Stop it, you're hurting me!
目的語を補完、it =相手の言動?、とにかく止めて欲しいと言いたい
6:真の主語や目的語を文章の後に置いて本文の主語、目的語を補って受ける
主語、目的語が長くて文が回りくどいときにその記号的性格を利用して形式的に主語、目的語の位置に置く
・Does it matter what colour it is?
①主語を補完、it =what以下の内容、それが重要な事なのかどうかが知りたい
②主語を補完、it =話に出てきた物?、何色なのかに焦点
・It's impossible to get there in time.
主語を補完、it =to以下の内容、不可能であることが重要
・It's no use shouting.
主語を補完、it =叫ぶこと、無駄であることを伝えたい
・She finds it boring at home.
目的語を補完、it =家にいること、それが退屈なことに気付いたと伝えたい
・It appears that the two leaders are holding secret talks.
主語を補完、it =that以下の内容、それが表に発覚したことが重要
・I find it strange that she doesn't want to go.
目的語を補完、it =that以下の内容、それが怪しいということを伝えたい
7:状況について話すときに使う
・If it's convenient I can come tomorrow.
主語を補完、it =相手の状況、都合が良いかどうかが重要
・It's good to talk.
主語を補完、it =状況、話すのに良いことを伝えたい
・I like it here.
目的語を補完、it =周りの環境、好きであることを伝えたい
8:文章のある部分を強調するのに使う
記号的機能と受けた先に焦点があることを利用して強調構文を作れる
・It's Jim who's the clever one.
主語を補完、it =who以下の内容、ジムであることを強調
・It's Spain that they're going to, not Portugal.
主語を補完、it =that以下の内容、スペインであることを強調
・It was three weeks later that he heard the news.
主語を補完、it =that以下の内容、3週間遅れを強調
9:まさに必要とされているもの
意味を持つ "it" が存在した!
守備範囲が広い "it" だから文脈から判断するのですが、ここで唯一 "it" に意味を持たせた用法がありました。「君持ってるね~」なんて言う時でも目的語を補完できる。
・In this business, either you've got it or you haven't.
目的語を補完、it =必要とされる資質、技能、持ってるかどうかが重要